正当な取引の誤拒否(フォルスディクライン)とは、正当な取引が誤って拒否されることで、顧客を苛立たせ、収益を減少させてしまいます。一度このような事態が起きると、ほとんどの顧客は再試行しません。その代わりに、ためらうことなく他の店へと移ってしまいます。
不正利用者(詐欺師)のように扱われたい顧客などいません。しかし、不正対策が実際の顧客の振る舞いではなく厳しいルールに依存していると、まさにそのような事態が起こります。つまり、正当な取引がブロックされ、顧客は去り、そして多くの場合、その顧客の生涯価値(ライフタイムバリュー)は失われてしまうのです。
厳しい不正対策が抱える問題
顧客は完璧なパターンに沿って買い物をするわけではありません。旧式の不正検知モデルがそれに適応できないと、正当な取引が網にかかってしまいます。文脈やアイデンティティ(本人性)への真の理解がなければ、不正対策は良い結果よりも多くの害をもたらしかねません。
取引がカード発行会社(イシュア)に届く前に、社内の不正検知モデルが何をフラグ立てするかを決定する上で重要な役割を果たします。もしそのモデルが、動的でデータに基づいたインサイトではなく、厳格なパラメーターに過度に依存している場合、優良顧客は不必要な手間(フリクション)に直面することになります。例えば、ある顧客が友人のいる場所からその友人のデバイスを使い、深夜に5枚の直前予約の航空券を予約したとします。そして、その結果として不正とフラグ立てされ、取引を拒否されたと想像してみてください。
このケースで不正対策が見落とした点は以下の通りです。
- 適応性のある意思決定: 不正検知モデルにはこの能力が欠けており、固定的なリスク指標のみに基づいて取引にフラグを立ててしまった。
- 高額決済: 不正対策ソリューションには、判断材料となるデータが十分でなかった為、善良な顧客による高額決済なのか、不正利用者なのかの判断ができなかった。
静的な(固定的な)不正対策ルールは、結局のところ「通常」パターンから外れた行動をした正当な顧客を罰することになりかねません。しかし現実には、予期せぬ理由で直前に旅行を予約する必要があるかもしれません。このため、現実の人間は予測可能な方法で買い物をするわけではないということ、そして不正対策戦略はその事実を考慮しなければならないということを、常に心に留めておくことが重要です。
より賢明な不正防止は、より良いデータから始まる
正当な取引の誤拒否を減らす最善の方法は、より多くの情報に基づいて意思決定を行うことです。最新の不正防止は、静的なルールに頼るのではなく、進化し続ける顧客の行動に対応するために、動的、文脈的、そして機械学習を活用したものでなければなりません。このアプローチの重要な要素が「アイデンティティ・インテリジェンス(本人性に関する知見)」であり、これは各取引を固有の顧客IDに紐づけ、その顧客の行動に関する継続的なインサイトを提供します。
より良い本人確認データが、より良い意思決定につながる理由は以下の通りです。
- アイデンティティ・インテリジェンスにより、たとえ新規顧客に見えても正当な顧客を認識できるようになり、結果として誤拒否が減り、よりスムーズな体験が実現する。
- 機械学習がリアルタイムで適応し、新たな不正パターンを発見すると同時に、優良顧客が最小限の手間で取引を継続できるようにする。
不正対策チームが、全体的でデータに基づいたリスク評価を活用すれば、セキュリティ基準を下げることなく、正当な取引の誤拒否を劇的に減らすことができます。
不正対策を最適化する3つの方法
不正対策を微調整することは、誤拒否のリスクを下げ、顧客満足度を向上させるという、大きな見返りをもたらします。不正対策戦略を最適化する際に考慮すべき、いくつかの実践的なステップをご紹介します。
1. アイデンティティ・インテリジェンスで顧客を認識する
本人性に基づくアプローチを用いるソリューションを活用することで、正当な買い物客(特に新規に見える顧客)と実際の不正利用者とを区別するのに役立ちます。
2. リアルタイムで動的な評価を用いる
静的な基準に頼ると、変化する行動を見落とす可能性があります。継続的なデータ更新に支えられたリアルタイムのリスク評価は、新たに出現する不正パターンをより的確に捉え、適応することができます。
3. 画一的な不正対策ルールを捨てる
厳格なルールセットは、正規の顧客をブロックしてしまい、収益機会の損失につながります。最新の適応型モデルなら、正当な取引を拒否することなく巧妙な不正を捕捉できます。
適切なバランスを取る
正当な取引の誤拒否は、コストがかかり、不満をもたらす問題である必要はありません。正しく行われれば、不正防止は不正行為者を阻止し、収益と顧客ロイヤルティを向上させます。データ共有の改善、よりスマートな認証、そして機械学習を活用した意思決定により、あなたのビジネスは、門前払いされてしまう優良顧客の数を大幅に減らすことができるのです。
それこそが、Forterがお手伝いできる領域です。当社のトラストプラットフォームは、不正対策が正確であることを保証し、販売事業者が実際の不正を排除しながら、より多くの正当な取引を承認できるようにします。
最高の不正防止とは、単に不正行為者を阻止することだけではありません。それは、正しい顧客をスムーズに通過させることなのです。
*** 本コンテンツは2025年3月28日に公開されたブログ( “Fine-Tuning Fraud Controls to Minimize False Declines” )を翻訳したものです。