顧客生涯価値(CLTV)について、あらためて考える。

ブランドが顧客生涯価値(CLTV)を重視するのは、それが現在そして未来におけるビジネスの成長と安定を意味するからです。

ブランドを信頼し、愛着を持つ顧客は、より多くの金額をより長い期間にわたって費やします。そこには明確な金額的価値が付随します。2024年の「信頼プレミアム調査」では、顧客は信頼する小売業者に対して平均で51%多く費やす意思があることが明らかになりました。

CLTVへの注力がうまくいかなくなるのは、多くの販売事業者が顧客ベース全体に対して画一的な方法で価値を高めようとすることです。このアプローチには問題があります。なぜなら、以下の可能性があるためです。

  • 会社に大きなコスト負担を強い、収益を削る
  • CLTVにとって逆効果になる
  • 優良顧客に悪影響を与える

では、どうすればCLTVがあなたの会社、顧客、そして長期的な関係に利益をもたらすようにできるのでしょうか?

顧客カテゴリーを明確に把握する

顧客は型にはまった存在ではありません。顧客のタイプに応じて、ショッピングジャーニーの各段階でCLTV戦略を適応させる必要があります。

あなたは顧客について多くのことを知っています。その知識を活用すれば、顧客は本当に望む体験を得ることができます。同時に、企業は注文の数ではなく価値を最大化し、最終的に企業にとって高すぎるコストを伴うことを回避できます。

例:スムーズな決済体験

2024年の「信頼プレミアム調査」によると、米国と英国の消費者の78%以上が、プロセスが難しすぎたり時間がかかりすぎたりすると、オンラインのショッピングカートを放棄する可能性があることがわかりました。したがって、チェックアウト体験をできるだけ手間なくスムーズにすることが重要です。一方、顧客アカウントとビジネスをリスクや脅威から保護する必要もあります。

これは難しい問題ですが、CLTVの視点で考えると解決が容易になります。

例:配送および返品ポリシー

2024年の「信頼プレミアムレポート」では、約95%の消費者が、どこで買い物をするかを決める上で配送ポリシーが重要だと回答しました。53%の消費者は、過去3ヶ月間に制限の厳しい配送ポリシーが原因でカートを放棄した経験があります。

一部の顧客は返品ポリシーを非常に重視します。事実、同レポートでは89%の消費者が返品ポリシーが買い物先を決める上で不可欠だと回答し、22%は制限の厳しい返品ポリシーが原因でカートを放棄した経験があることがわかっています。

では、すべての顧客に寛大な配送条件と許容範囲の広い返品ポリシーを提供しなければならないということでしょうか?いいえ、そうではありません。なぜなら、それではビジネスがコストのかかる不正利用に対して無防備になり、ビジネスにとってのCLTVを最大化できないからです。より多くの顧客を獲得できるかもしれませんが、同時により多くの顧客によってお金を失うことにもなります。

これを正しく行うには、顧客について次のような重要な問いを投げかけることで、CLTVに関する混乱を取り除く必要があります。

  • この顧客は、配送や返品ポリシーの詳細をチェックした履歴があり、それらを気にしていることを示しているか?
  • この顧客は、非常に高い返品率や返金率の履歴があり、不正利用者である可能性を示しているか?
  • この顧客は、あなたが価値を置く顧客か?頻繁に購入したり、友人に紹介してその友人もアクティブユーザーになったりしているか?

これらの質問への答えに応じて、その顧客に対して提供する意思のある配送・返品ポリシーの柔軟性を調整することができます。

転売ヤー(リセラー)に焦点を当てる

転売ヤーも顧客ではありますが、CLTV指標を乱さないためには、彼らを完全に異なる視点で扱う必要があります。会社の方針によっては、転売ヤーによって売上が上がることを良しとしているかもしれませんが、彼らを引き付けるためにマーケティング費用を使いたくはないはずです。

転売ヤーは常に、自身の利益率にとって何が最善であるかに集中します。彼らにブランドへの忠誠心はありません。彼らに割引や寛大なポリシーを提供しても意味がありません。それはまさにお金をどぶに捨てるようなものです。贈答品や無料サンプルのうち10〜18%が通常、転売ヤーに渡っているという事実に気づけば、その点は明確になります。

この課題の重要性を過小評価してはいけません。小売業界において、転売ヤーは一般的に金額ベースでトラフィックの8〜10%を占めています。もしギフトカードを販売している場合、その平均はさらに高く10%になります。高級品を扱う事業者であれば、売上の金額ベースで約15%が転売ヤーによるものである可能性が高いため、転売ヤーと取引しているかどうかを把握することはさらに重要になります。

どの顧客が一般消費者ではなく転売ヤーであるかを見分けるデータは、社内にあります。必ずそのデータを活用し、それらのユーザーに対して提供するサービスを適宜調整してください。

CLTVの最適化は、顧客にとってもより良いこと

小売業者は、顧客を決済完了まで誘導するために多大な努力を注ぎます。しかし、新規顧客獲得コストは既存顧客維持コストを遥かに上回ります。CLTVは、その事実を実践的に表現したものです。

CLTVを深く掘り下げ、単なる顧客のライフタイム(期間)ではなく、顧客生涯価値を重視し始めると、あなたのビジネスは勝利を収めます。転売ヤーや不正利用者といった顧客カテゴリーへの無駄な支出を削減できます。さらに興味深いのは、このアプローチが顧客にとっても有益である点です。

顧客が利益を得る理由は以下の通りです。

  • 彼らにとって最も重要な種類の利益を受け取ることができるようになる
  • 会社は優良顧客により多くのお金と集中力を費やすことができ、それはロイヤルティポイントやプログラム、特別オファーなどに反映される
  • ビジネスの強みが増し、顧客が愛するブランドが成長し、彼らのために革新を続けることを意味する
  • 最適でない顧客を避けることで節約できたお金は、割引として理想的な顧客に還元できる
  • 企業はターゲット顧客が最も求める製品やサービスについて明確な洞察を得られ、それらをさらに提供できるようになる

今こそ、CLTVに関する混乱を終わらせ、あなたのビジネスと顧客のために最大の価値を提供し始める時です。

*** 本コンテンツは2024年10月31日に公開されたDoriel Abrahams によるブログ( “End Your CLTV Confusion: Unlock Hidden Growth By Focusing on Value” )を翻訳したものです。